第11章 冷凍マウスの解凍法(2) - ラット篇 -

 ラットはドブネズミの飼養変種であるため、マウスに比べてずっと大きく、体長でおよそ2倍、体重では6倍にもなります(当店のLサイズ同士を比較した場合)。このため、ボア・パイソン、大型のモニターやトカゲにとっては、非常に栄養価の高い最適のエサと言えます。また、ラットは、ヘビにとっては特に嗜好性の高いエサとしても知られています。ワイルドのボア・パイソンなどを立ち上げる際、頑なにマウスを食べようとしない個体でも、ラットを与えてみるとあっさりと食べた、といったケースも少なくありません。しかし、ラットはサイズが大きい分、解凍方法については、マウスとは少々違ったコツが要求されるのもまた事実です。また、マウス以上に臭いが強いため、保存に際しても若干の工夫が必要になってきます。そこで、今回は、冷凍ラットの解凍方法を中心に、その取り扱い方について紹介していきたいと思います。なお、冷凍マウスの解凍方法については、「第12章 冷凍マウスの解凍法(1)」をご参照ください。

■解凍方法

 冷凍ラットの解凍にも様々な方法がありますが、やはり冷凍マウスの場合と同様に、お湯に浸けて解凍するのが最も手軽で確実な方法でしょう。ファジーやSサイズのラットなら、大きめのタッパウエアを用意するだけで、後はマウスとまったく同じ方法で解凍することができます。ただし、Mサイズ以上になってくると、さすがにサイズが大きいことや臭いが強いことから、次に紹介するような手順で解凍するのが良いでしょう。

(1)容器には、バケツなどを用意します。
 特にLサイズやリタイア・サイズを5〜6頭まとめて解凍するような場合は、10リットル以上の大きなものが必要になります。

(2)大きめのビニール袋にラットを入れます。
 もちろん、臭いが気にならなければ、ラットをバケツに直に入れて解凍しても構いません。しかし、ビニール袋に入れて解凍するほうが、濡れたラットの水分を拭き取る手間も省けますし、何より後始末もずっと楽になります。ビニール袋は、ゴミ収集用などの大きなものを使用します。気をつけなくてはいけないのは、ラットは意外なほど爪が鋭いということ。薄手のビニールでは簡単に穴が開いてしまいますので、できるだけ厚めの丈夫なものを、できれば2枚重ねにして使うほうが良いでしょう。また、あらかじめラットをラップで包んだり、保存用のジップロックなどに詰めた状態で、ビニール袋に入れてしまうのも一法です(本文下の写真参照)。

(3)ビニール袋の空気を抜き、口を縛ります。
 ビニール袋にラットを入れたら、これをバケツに入れます。中にお湯が入らないよう、ビニール袋の口は縛りますが、この時、できるだけ中の空気を抜いておきます。これは、解凍中に袋が浮いてしまうのを防ぎ、中のラットを均等に解凍できるようにするためです。

(4)バケツにお湯を注ぎます。
 お湯の温度は、50〜60度ほど。あまり熱いと、ビニールが劣化して有害物質が発生する怖れもありますし、ポリバケツだと変形してしまうこともあります。ただし、ビニール袋に入れずに、直にお湯に浸けて解凍する場合に限り、60〜70度と少し高めにします。フタができるタイプのバケツなら、密閉状態にならない程度にフタを載せておきます。

(5)定期的にお湯を交換する。
 しばらくするとお湯が冷めてきますので、定期的にお湯を交換します。ラットはサイズが大きい分、マウスに比べて完全に解けるまでに時間もかかり、頻繁なお湯の交換が必要です。特に冬場、リタイア・サイズを何頭も解凍するとなると、解け初めの段階では数十分でお湯が冷めてしまうほどです。

(6)完全に解けたら、水分を拭き取ります。
 ビニール袋に入れて解凍する場合でも、もともと凍った状態のラットが解ければ当然多少の水分は生じます。生体に与える前に、ラットを新聞紙の上などに取り出し、雑巾やタオルで軽く水分を拭き取っておきます。マウスの場合と同様、指で腹を押してみて、ぶよぶよとした感触があれば、内蔵までしっかり解けていると判断できます。

(7)与え方
 冷めたラットには反応しない個体もいるため、できるだけ温かいうちに給餌します。生体のケージ内にラットを入れる場合は、スネークトングや柄の長い火ばさみ(最近は100円ショップでも入手できます)、「コッヘル」(弊社取り扱いのステンレス製鉗子)などを使います。特にコッヘルは、給餌用に適した長さで、リタイア・サイズのラットでもしっかりと保持することが可能ですし、剛性面でも使用頻度の高い方には安心でしょう。

 素手で掴んで与える方法は、飼育者にとっての安全面からも、当然避けるべきでしょう。特に大型のヘビの場合、ラットの臭いには敏感に反応するため、同じ室内でビニール袋を開けただけで、興奮して色めき立ってしまうほどです。こうした状況では、ケージの入り口を開けた途端にヘビが飛び出して来る、といったこともありうるだけに、ヘビの頭部が入り口から遠ざかっている隙を見計らって、トングや火ばさみでラットを素早くケージ内に入れるようにします。

■保存方法

 マウスと同様、冷凍庫で保存しますが、サイズがはるかに大きいため、家族と共用の冷蔵庫では、何頭もまとめてストックできないのが頭の痛いところでしょう。大型のヘビやモニターを何頭も飼育しているなら、いっそ専用の冷凍庫を購入して大量に保存するというのも一つの手ですが、さすがに一般的な方法とは言い難いものがあります。飼育個体がそれほど多くないのなら、やはり少量をストックして、使い切ったらその都度補充するようにしたほうが、品質維持の面からも良いでしょう。

 また、ラットは臭いが強いことから、マウス以上に家族の理解を得にくい場合もあります。確かに解凍したラットは独特の強い臭いをもっているものの、完全に凍った状態では、品質的に問題がない限り、ほとんど臭いは気にならないはずです。従って、まずラットをラップで包んだ後、ビニール袋や大型のジップロックなどに入れて口をしっかりと閉じ、これを外から見えないように新聞紙で包んでしまえば、臭いが外に漏れる心配はまずありません。それでも不安なら、更にビニール袋や買い物袋などに入れて保存すれば良いでしょう。

 品質の見極め方については、マウスの場合と同様です。冷凍状態で内臓部分が黒っぽく透けて見えるもの、肉痩せしているもの、毛並みが不自然に悪いものは、品質が劣化していると考えられます。もちろん、冷凍状態で極端に臭いが強いものも、鮮度が落ちていると見なせます。また、「リタイア・サイズ」のラットについては、本当の意味での「リタイア」、つまり既に繁殖能力がなくなってしまった老齢のラットが販売されている例もあると聞きます。こうした老齢のラットは、栄養価の面でも、ラット本来がもつ効果を十分に発揮できないと考えられますので、やはり使用しないほうが無難でしょう。

■冷凍ウサギについて

 最近は冷凍ウサギの入手が以前に比べて容易になってきているため、ボアコンストリクターの成蛇など、大型のボア・パイソンにこれを与える飼育者も少なくないようです。冷凍ウサギの解凍も、ラットの場合と同様に行うことができますが、サイズが大きい分、ラット以上に長い解凍時間を要します。もちろん、ストックに必要なスペースも、ラットの比ではありません。また、根本的な問題として、果たしてボアコンストリクターのような、平均して3mにも満たないようなヘビに対して、わざわざ手間をかけてウサギを与える必要があるのかというのも疑問です。やはり2〜2.5mぐらいまでのヘビには、リタイア・サイズのラットを1度に2〜3頭与えれば十分で、ウサギは3〜3.5m以上の「巨大種」に適したエサ、と考えるのが妥当なのではないでしょうか。

 かつては冷凍ラットが今ほど普及しておらず、生きたまま与えることも多く、そのためラットの気性の荒さが逆にヘビにダメージを与えてしまうというデメリットもありました。しかし、冷凍ラットがコンスタントに入手できるようになった今日では、こうした心配もなくなり、むしろ手軽に与えられる良質のエサとして、ラットのもつメリットを大いに活用したいものです。